サイン会・イベント

『名探偵は嘘をつかない』
(阿津川辰海)
刊行記念トークセッションは、「本格ミステリー小説の書き方」の秘密がいっぱい!

2017.08.25ジュンク堂書店池袋本店にてイベントは開催されました。

本格ミステリー小説の新人発掘プロジェクト「KAPPA-TWO(カッパ・ツー)」。
「ジャーロ」はこれまで誌上で作品を募集し、選考経過から入選作決定、単行本化のための改稿過程までも詳細にレポートし続けてきました。
その第一期で入選した阿津川辰海氏の『名探偵は嘘をつかない』は、今年6月についに単行本として刊行。それを記念して阿津川氏と選考委員である石持浅海氏、東川篤哉氏によるトークセッションが7月某日、ジュンク堂書店池袋本店で開かれました。

左から、石持浅海氏、阿津川辰海氏、東川篤哉氏

カッパ・ツー 第一弾 受賞作品

『名探偵は嘘をつかない』
阿津川辰海

概要: 「ただいまより、本邦初の探偵弾劾裁判を開廷する!」
彼が本当に嘘をついていないのか、それは死者を含めた関係者の証言によって、あきらかにされる!
名探偵・阿久津透。その性格、傲岸不遜にして冷酷非情。妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。しかし、重大な疑惑が持ちあがった。それは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したというものだった──

書評はこちら

単行本化を記念してのトークだけに、入選決定から原稿修正までの流れを追うように話は進みましたが、両選考委員からはのっけから
石持氏:「(候補作のなかで)完成度は一番ひくかったけれども一番面白かった」
東川氏:「正直一番下手だなと思いましたね(笑)。下手だけど面白いというのは、ある意味すごいなと」
と、誉めているのかなんだかわからない発言が飛び出し、会場は笑いに包まれました。

そもそもこのプロジェクトでは、入選作が決定したとき「ジャーロ」56号誌上で石持、東川両氏による「選考対談」を掲載し、候補作・入選作の良い点や悪い点、改良ポイントを詳細に語り合ってもらいました。

また次の「ジャーロ」57号では「【受賞者育成計画】座談会」の銘打った企画を掲載、石持、東川両氏に入選者の阿津川辰海氏を加えた3人で、入選作の課題点、改良方法を徹底的に議論してもらいました。

つまり、「応募原稿を徹底的に改稿してから刊行する」ということが前提で、その過程に選考委員も密接に関わるというこれまでにないプロジェクトなのです。

今回のジュンク堂鼎談でも、
東川氏:「こういう形(誌上座談会)で作者と会って、アドバイスをするということは過去になかったので、いいチャンスだと思って好きなだけ言いました」
石持氏:「話しているうちに論点が整理されて、どこをどう直せばいいかというのが頭の中で整理されたのではないかと思いますね」

と選考委員として【育成計画】の効用を語っています。
一方、応募原稿は原稿用紙500枚だったのが、改稿の結果、単行本では900枚弱にもボリュームアップした阿津川氏も 「他の新人賞だったらその賞の刊行スケジュールがあると思いますが、〈カッパ・ツー〉では直すだけ直して出すということで、本当にたくさん時間をいただき、いろいろ考え抜きました」 と、プロジェクトがもつ意味を語っていました。

ただ、阿津川氏の口からポロリと漏れた
「応募作が『他の新人賞だったら通っていない』と言われた状態で、『それを直して刊行します』と言われたら相当なプレッシャーがかかります(笑)」
「最終選考の対談(「ジャーロ」56号)を読ませてもらった後に、この三人で座談会をやりましたが、ボロクソに言われている最終選考の様子を読んだ後ですから、行く前は本当に胃が痛かったです」
との本音に、会場は再び笑いに包まれました。

入選作の設定や仕掛けられたトリックについても言及されたあと、最後に「カッパ・ツー」への作品応募について鼎談者からは、
石持氏:「長編の腕試しをやってほしい。ですから、欠点があっても直せるものなら欠点としてカウントしない」
東川氏:「必ずしも完成度を競うコンテストではない。直せば面白くなるものでいい」
阿津川氏:「特殊設定ミステリーを書くときの心構えなど、二作目以降にも役立つことをたくさん聞けました。そういうところは二作目以降も活かしていけるのではと思います」

という話も出ました。その後、お客さんからの質問に3人がそれぞれ答え、さらに3人そろってのサイン会も開かれてトークセッションは和やかに、そして賑やかに終了しました。

今回のジュンク堂鼎談の詳しい内容は「ジャーロ」61号でお読みいただけますが、これまで「ジャーロ」で掲載してきました

・56号 選考対談
・57号【受賞者育成計画】座談会
・61号 刊行記念鼎談

を続けてお読みいただくと、いわば石持浅海氏と東川篤哉氏を講師に迎えた「本格ミステリー小説の書き方講座」のようになっているのが分かるはずです。
さらに言ってしまいますと、「カッパ・ツー」第二期募集はすでに始まっていますが、応募作品の執筆にも役立つ情報がたくさん盛り込まれています。
「カッパ・ツー」あるいは他のミステリー新人賞に応募を考えている方も必読の記事だと思います。 ぜひ通してお読みください。